徹夜明けの朝７時、眠い目をこすりながらトーストしたマフィンをかじっていると・・・電話が鳴る。

だれだ？とおもいながらも受話器を取ると、Ｍ氏からだった。「スクープだよ。鯨が浜に打ち上げられてる。新舞子海岸だ。」

え！？くじら・・・確かにいわきは潮目の海だから、餌となる魚も豊富だし、鯨がいてもおかしくない。・・・けれど、鯨は普通浅瀬ではなく、遠洋に暮らす生き物である。どうしたのだろうか。
以下、生き物の死を直視することになりますので、【追記】に記載します。直視する覚悟のある方だけ、続きＲｅａｄ　Ｍｏｒｅ・・・をご覧ください。

仏滅だからだろうか。いろいろあるものだ。とにかく見てみないことにはわからない。時間を作って現場に行ってみる。
 
 正午近く、現場の新舞子海岸に到着してみると、大きな巨体を横たえ息絶えた、鯨の亡骸を見つけることが出来た。市の職員の方の立ち会いのもと、鯨を砂浜に埋葬するための準備をしているようだ。
 
埋葬するための穴を重機を使って、砂浜に掘る・・・。遠くから見ても、鯨の体には傷が目立つ。砂浜に引き上げるためについた傷か、あるいは、この傷が原因で衰弱して浜辺に流れ着いたのか、あるいはその両方か。原因はよくわからない。
 
間近で見ると、歯鯨であることが分かる。体長１０メートルになろうかという、たぶんマッコウクジラ。歯にはタコの足のようなものが引っかかっていた。アゴのまわり、体表には無数の傷があった。この状態を表現するとすれば、絶命・・・という言葉以外にない。
 
このように鯨が浜に打ちあげられる事例は、世界各地でかなり耳にするが、これが原因とはっきりと言えるものはないのだという。
地球最大の哺乳類である鯨。われわれとは違う種ではあるけれども、その死に直面するとやはり神妙な気持ちになる。まさに、おそらくは昨日、一昨日までは生きていたとはっきり感じとれる。それが絶命したのだ。しかも、本来の生活の場＝海ではなく、陸において・・・。
 
鯨が浜に打ち上げられるのは仕方のないことなのだろうか。
そうではないと思う。食物連鎖の果ての死、あるいは自然死ならばまだしも、このような不自然な死はなくなるべきだと思う。そのための努力を、万物の霊長であり、科学という叡智を授かった人間はしていけると思う。
 
願わくば、このような動物の不自然な死にスポットライトが当てられ、このような不自然な死がなぜ起こるのかが解明される事を切に願います。
 
このような動物の不自然な死に遭遇するたび、レイチェル・カーソン女史がその著書『沈黙の春』の結びで語った言葉が頭をよぎります。
「現代人はやたらと毒物をふりまき、本質的なものを見失ってしまった。やたらと棍棒を振り回した洞穴時代の人に比べて何が進歩したのだろうか。」

毒物は科学薬品だけを指すものとは限らない。人類の手にした科学が、悲劇の原因になっているのかもしれないし、違うかもしれない。しかし、それを検証し、解明できるのも科学だけだと思う。科学は人類の幸せのためだけの道具であってはならない。地球に暮らすすべての生物の幸せを追求するためのものであってほしい。
市民生活を営む僕にもできることは多分あるだろう。少なくとも、暮らしを振り返ってみる必要はあるのではないだろうか。
 
最後に、残念ながら不遇の死を迎えることとなった、鯨さんの冥福を祈ります。